株式会社Entime
代表取締役

1988年、宮崎県宮崎市出身。大学卒業後、野外教育施設での勤務を経て、外資系医療機器メーカーの営業職に従事。厳しいノルマと激務の中でビジネスの基礎を叩き込まれるも、メンタル不調を経験。その後、副業での学びを経て、2021年に地元・宮崎にて株式会社Entimeを創業した。現在は、散らばった数字や情報を整え、「数字で判断できる会社」をつくるDX支援を行う。ツール導入ではなく、判断材料が自然と集約される”仕組み”を設計することを信条としている。従業員の「時間」を生み出し、人生を豊かにすることをミッションに掲げ、YouTubeでの発信や講演活動にも注力している。
創業は2021年、コロナ禍のさなかでした。当時、医療機器営業をしていた私は、病院への訪問が制限され仕事ができない状況に陥りました。そんな中、地元の飲食店などが苦境に立たされているのを見て、「地元を盛り上げたい」という思いから、副業で学んでいたSNS運用のスキルを活かして起業したのです。
多くの企業には数字があります。しかし、その数字は判断に使える形になっていません。
「ツールは増えているのに、判断の質は上がらない」「DXを進めているはずなのに、忙しさは変わらない」
問題はツールの有無ではなく、“情報が分断されている構造”にあります。私はこの状態を「分散型DX」と呼んでいます。
そこで私が提唱しているのが「集約型DX」です。散らばった数字と情報を一つの基盤に集め、判断に必要な材料が自然と揃う環境をつくる。
その実装手段の一つとして活用しているのが、ビジネスコラボレーションツール『Lark』です。
チャット、ドキュメント、データベース、勤怠管理などを一つに統合できるLarkを用いながら、単なるツール導入ではなく、業務の設計そのものを見直します。
重要なのは、社員の意識を変えることではなく、基準が揃う環境をつくることです。数字が見えるのが当たり前。判断材料が揃っているのが当たり前。その状態が定着すると、組織の基準値は自然と引き上がります。そして、その循環こそが経営資産になります。
事業の柱は2つあります。1つは、助成金を活用して企業に出向き、Larkの使い方や自社をスマートにする方法をお伝えする研修事業です。「誰も置いていかない」をモットーに、サポートスタッフを配置したり、ワークショップを取り入れたりして、社員全員が自主性を持って取り組めるよう工夫しています。もう1つは、社内にリソースがない企業様に代わって、弊社が仕組みを構築する事業です。
数字が揃えば、残業は減り、判断は速くなり、時間が生まれます。その時間こそ、経営者が未来を描くための資源です。地方企業が、勘や経験だけでなく、数字で未来を描けるように。分散型DXから集約型DXへ。“見えない経営”をなくすことが、私の使命です。
弊社の強みは大きく分けて2つあります。1つ目は「実績の透明性」です。これまでの支援実績を積極的に公開しています。テキストだけでなく、対談形式の動画をYouTubeで発信しているのは、成果を誇るためではありません。どのような課題があり、どんな設計を行い、何が変わったのか。プロセスごと開示することで、再現性を担保したいと考えているからです。
たとえば、従業員数400名規模の冠婚葬祭系の企業様の事例です。以前は月末になると、各部署から集まるExcelデータを手動で集計するため深夜まで残業されていたそうです。そこでLarkを導入し、入力データが自動集計される仕組みをつくったところ、業務時間が大幅に短縮。「子どもと遊ぶ時間ができた」という喜びの声をいただいたときは、単なる業務効率化にとどまらず、その人の人生にも寄与できたという喜びを感じました。また、ある観光協会様では、問い合わせ窓口をLarkに集約したことでテレワークが可能になりました。柔軟な働き方が実現したことで、採用活動にもプラスの影響が出ています。
2つ目の強みは「課題構造から導いた設計フォーマット」です。私自身がYouTubeなどで積極的に情報を発信していることもあり、全国各地のさまざまな業種の方からお問い合わせをいただいています。弊社の研修では受講者の方々に「Larkでの課題解決」を発表していただいているので、多種多様な企業様のユニークな活用事例が自然と弊社に蓄積されているのです。
そしてさまざまな業種の支援を重ねる中で、気づいたことがあります。業界は違っても、
「数字の分散」「判断材料の不足」「忙しさの原因不明」という課題構造は驚くほど似ているということです。
だからこそ、私たちは業種ごとにゼロから考えるのではなく、課題構造に合わせて最適化できる“設計フォーマット”を持っています。これこそが、他社にはない弊社のバリューだと自負しています。
実は、創業2期目から3期目にかけて大きな壁にぶつかりました。クライアントが増えるにつれてスタッフを増やしたものの、管理コストが増大し、売上は上がっても利益が残らない状況に陥ったのです。
「売上が上がれば経営は安定する」そう思い込んでいた自分の甘さに気づいた瞬間でした。
そのときに救いになったのが、地元の先輩経営者からのアドバイスでした。「融資を受けられるというのは会社のステータスだ。一度自分の実力で借りられるか試してみろ」と言われたのです。それまで私には「借金=悪」という固定観念がありましたが、その言葉で考えが180度変わりました。
顧問税理士にも相談したところ、融資を受けることが叶い、資金繰りが安定して精神的な余裕が生まれました。この経験から、正しい知識を持つこと、そして経験豊富なメンターの存在がいかに重要かを学んだのです。自分の偏った常識を疑い、先人の知恵を借りることで、事業を次のステージへ進めることができたと感じています。
今後は、現在の事業を拡大させつつ、私個人としては学生に向けた講演活動にも力を入れたいと考えています。きっかけは数年前、地元の中学3年生に向けて講演したことです。そこで感じたのは、情報にあふれているにもかかわらず、自信を失っている若者が多いということでした。SNSを通じて同世代の成功を見る一方で、「自分には無理だ」と可能性を狭めてしまっている。
私は、地方で就職することだけが唯一の選択肢ではなく、「自分で起業する」という道もあること、そして本来「働くことは楽しい」ということを伝えていきたいと思っています。私自身、父を69歳で亡くしたことで、「命は有限である」という現実を突きつけられました。挑戦せずに後悔することが、一番怖い。だからこそ、まずは大人が余白を持つべきだと考えています。
バックオフィスを整え、判断できる環境をつくり、無駄な忙しさを減らす。そうして生まれた時間が、新しい挑戦や次世代への投資につながっていく。
地方で働くことも、起業することも、挑戦することも、すべて選択肢の一つであっていい。働く大人の背中が変われば、子どもたちの視野も広がり、挑戦できる社会が地方からつくられていく。それが、これからの展望です。
これから社会に出る学生や、若い方々に伝えたいのは、「情報が多い時代ほど、判断力が必要だ」ということです。 ネットで検索すれば何でも出てくる時代ですが、ネットの情報には誰も責任を持ってくれません。私自身、起業当初は本や動画を見て学んでいましたが、そこから一歩踏み出すことができませんでした。転機になったのは、実際に成果を出している経営者に会いに行き、直接話を聞いたことです。
情報で満足せず、目標となる経営者に会いに行き、その人が持っている「生きた情報(一次情報)」や経験値に触れること。そうすることで判断力が磨かれ、選択肢を広げることができます。
時間が生まれれば、人は挑戦できます。基準が整えば、迷いは減ります。情報に振り回されるのではなく、自分の頭で判断できる人になってほしい。それが、自分の道を切り開く力になると信じています。