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建築×ITで「空間」を表現の手段に。すべての個人が輝く社会の実現へ

SAMURAI CEO2026

株式会社Urth
代表取締役CEO

田中 大貴

東京都出身。早稲田大学創造理工学研究科博士課程在籍。高知県や広島県への転校を経て、早稲田大学建築学科に入学後、建築のデザイン思考を学習。商学部の授業に参加し、建築の考え方が、スタートアップの課題を見つけ解くことにつながることに気づく。大学在学中の2020年1月、株式会社Urthを設立し代表取締役CEOに就任。建築デザインの知見を活用し、「空間を表現の手段にする」ことを目指し、独自のメタバース事業を展開している。

建築の発想で困りごとを解決! コロナ禍に始まったメタバースへの道

建築に興味を持ったのは、中学2年生のときに見たテレビ番組がきっかけです。匠が空間を変え、住人のおばあさんが涙して喜ぶ姿を見て、「いい仕事だな」と感動し、建築家を志して上京しました。大学の建築学科では「リアルな建物」を通じた表現や課題解決を学びましたが、次第に「物理的な建物という枠を超えてもっと幅広く応用できないか」と考えるようになりました。

そこで、視野を広げるために商学部の授業に潜り込み、他学科の学生たちと交流。次第に、「人の困りごとをデザインで解決する」という建築的思考は、リアルな建物だけでなく、ITなど他の分野でも活かせるのでは、と思うようになりました。

思いを実現するため、在学中に東京都のテニスコート予約システムを開発。さらに、弟が家庭教師のアルバイトをキャンセルされて困っていたのを見て、オンラインで契約が結べ、キャンセル料も回収できる決済システムサービスをつくりました。これらを大学の教授にスマホで見せたところ、「君、面白いから来い」と誘われ、早稲田大学の起業促進プロジェクトに参加することになり、そこで支援を受けて会社を設立したのが始まりです。

設立当初は、結婚式で二人のための曲をつくるオンライン契約・決済サービスを手がけていましたが、創業翌月の2020年2月、新型コロナウイルスが流行し始めました。主要顧客とつなげてもらうはずの結婚式場が休業に追い込まれ、創業わずか2か月で事業転換を余儀なくされたのです。そこで、やりたいことのひとつだった「VR上でショップをつくって物を売る」というアイデアを実行しました。これが現在のメタバース事業の始まりです。

建築デザイナーの未活用リソースを武器に、誰でもアクセスできる「開かれた空間」をつくる

弊社のメタバース事業には3つの強みがあります。1つ目は全国の建築士と連携している点です。国内には約7万5000の建築事務所があり、リソースは豊富にあります。建築士は「建たない建築」を構想することに長けており、顧客の抽象的な要望を具体的な空間に落とし込むプロフェッショナルです。そこで弊社では、通常はゲームエンジニアに依頼する空間制作を建築士に委託することで、コストを抑えつつ顧客の要望を的確に反映する仕組みを構築しています。

2つ目は、システム的なハードルの低さです。専用のVRヘッドセットなどを必要とせず、一般的なPCやスマートフォンのブラウザから簡単に入れる仕様にしています。ディズニーランドがアクセスの良い場所にあるから人が集まるのと同じように、どんなに良いコンテンツもアクセスが悪ければ価値は生まれません。

3つ目は課題解決力です。たとえば、ある大手カメラメーカーでは全国のファンが写真を持ち寄り、メタバース上で交流する新しい場が生まれました。以前はメルマガによる一方的な発信でしたが、メタバース上では相互のコミュニケーションが盛んです。また、ある製造業の企業では機密情報を守りつつ工場の内部を案内できるため、採用や商談の場として成果を上げています。

「PDCA」ではなく「PDPD」で突き進む。失敗を恐れず、暗闇に飛び込むマインド

私は極端な楽観主義で、失敗をあまり引きずりません。よく「失敗の原因を分析して再発を防げ」と言われますが、分析している時間があるなら、すぐに次の手を打ったほうが早いと考えています。私はPDCAのC(評価)を省き、「PDPD」で回しています。3回も同じ失敗をすれば、どんな人でも間違いだとわかるので、そこで方向転換するほうが自分には合っていると感じています。分析に時間をかけるよりも、その間に2回多く失敗して経験値を積むことが自分には、有効だと考えています。

私自身の強みは、足元が見えない真暗闇にも飛び込めることだと思います。着地点が見えなくても、まずは飛んでみる。床にぶつかったら、そこを足場によじ登ればいい。多くの人は足元をライトで照らし、安全を確認してから進もうとしますが、それでは遅くなってしまいます。失敗して悩む時間には意味がありません。それよりも早く結果を出し、良い状態をつくることに全力を注ぐべきだと考えています。

実際、過去には会社の資金が尽きるまでの期間が残り14日になるという危機に直面したこともありました。周囲から止められるほどの窮地でしたが、私自身は「世の中に必要なものをつくっているのだから、きっとなんとかなる」と楽観視していました。この楽観主義が弊社の推進力となっており、大きな壁さえも楽しみながら乗り越えてこられた理由だと思っています。

人類の活動領域を広げ、争いのない世界へ。メタバースからリアル、そして宇宙への挑戦

直近の課題は海外展開です。弊社のシステムはドル建てのサーバーを利用しているため、円安が進むと原価が高騰します。この状況を打破するため、欧米の市場へ進出し、数年以内に売上の半分を海外比率にすることを目指しています。

長期的には、「2035年までに火星に家を建てる」という目標を掲げています。突飛に聞こえるかもしれませんが、これは人類の活動領域を広げ、争いをなくすための合理的手段です。歴史を振り返ると、行き場を失った人類は資源を奪い合ってきましたが、大航海時代に新大陸(アメリカ)が見つかった際は、そこへヨーロッパで資源が足りない人が移動することで争いを回避できました。

今後、AIの進化により個人の能力差がつきづらくなるとされると、既存の資源やポストを持っているほどより優位になり、差が埋まらない状態となり、最終的には、奪い合う社会になりかねません。だからこそ、かつての新大陸のように、誰もいない「物理的なフロンティア(火星)」を開拓することで、奪い合うのではなく足りない人は新天地を目指せる状態を生み出すことに争いを減らすヒントがあると思っています。

その第一歩として、まずは地球上の「家」のあり方を変革するつもりです。現在は、建設するのに何千万もする家を、3Dプリンターやロボットを活用してより手頃な価格で建てられるようにする。そうすれば、誰もが気軽に住む場所を変えられるでしょう。メタバースからリアル、そして宇宙へと人類の可能性を広げる挑戦を続けていきます。

「特別」を「当たり前」に変える。会社を利用して自分のやりたいことを実現してほしい

弊社が大切にしているのは「特別を当たり前にする」という価値観です。世の中の常識にとらわれず、先入観を持たずに道を切り拓ける人と一緒に働きたいと思っています。

私は、社員に対して「私の夢についてきてほしい」とは言いません。仲間を引っ張るスタイルを期待されることもありますが、私はそうではありません。一人ひとりが自分の人生に責任を持ち、自分のやりたいことを実現するための手段として、この会社を利用してくれればと思っています。スキルを試したい、グローバルに働きたい、あるいはリスクは社長に負わせてアグレッシブな挑戦をしたいなど、動機は何でも構いません。個人の目標と会社の方向性が重なっていれば、それで十分です。

学生の皆さんには、ぜひ一度、小さくてもいいので自分のビジネスを立ち上げてみることをおすすめします。自分で商売をして「ビジネスとはこういうものか」という肌感がわかれば、社会に出たときの景色が大きく変わるはずです。もし、あなたのやりたいことが弊社のビジョンと重なるなら、ぜひ一緒に働きましょう。ここには、暗闇に飛び込み、新しい価値をつくる面白さがあります。熱量を持った方と出会えることを楽しみにしています。