CEO’s

“自分が評価された”という体験が、 心を動かすマッチングイベント 本音で話せる“しゃべる”場をつくる

SAMURAI CEO2026

株式会社shabell
代表取締役

守岡 一平

1982年、和歌山県生まれ。大学卒業後に株式会社ホリプロへ入社し、タレントマネージャーを2年半務める。その後、「芸能界という限られた狭い世界でなく、もっと広い社会で自分を試してみたい」という思いから株式会社マイナビへ転職。新卒採用の支援や広告営業に8年間従事し、多くの企業の採用活動をサポートする。2016年、株式会社shabellを設立。HRコンサルティング、PRキャスティング企画、Webサービスの運営開発などを行っている。

芸能界から人材業界へ。8年間の経験を経て起業

株式会社shabellは、主に人材業界において新卒採用支援を行う会社ですが、私はもともと人材業界で働いていたわけではありません。

私は大学卒業後、新卒で芸能事務所の株式会社ホリプロに入社し、2年半ほどタレントマネージャーを務めました。華やかな世界ではありましたが、特殊な環境に身を置く中で、ふと「狭い芸能界から広い人間界に帰りたい」という思いが芽生えました。

「人間界」について考えたときに気付いたのが、芸能界も結局は「人」の才能に関わる仕事だということです。そこから人材業界に興味を持ち、株式会社マイナビに転職しました。

マイナビでは8年間、新卒採用を支援する部署で広告営業などに従事し、そこから独立して現在に至りました。元マネージャーという経歴は異色といわれることが多いですが、自分ではあまりそう感じていません。私のまわりに、マネージャー経験者が多いからでしょうか。ただ、営業先での会話のきっかけとしては、これ以上ない話題にはなりますね。

起業のきっかけは、マイナビでの経験が大きく影響しています。もともと起業を志していたわけではまったくなく、「8年間の月日が自然と導いてくれた感覚」です。30代に入り、営業責任のある立場になって、同年代の経営者と話す機会が増えたことが転機となりました。

彼らの熱量に触れるうちに、「自分で可能性を追求し、世の中にまだないサービスをつくっていく方が、自分のためにも世の中のためにもなるのではないか」と考えるようになり、32歳のときに独立を決断したのです。

目指すは「新しい価値基準の創造」。承認欲求から始まる新しいマッチングの形

私たちが大切にしているのは「新しい価値基準を創造する」というミッションです。新卒採用市場における企業と学生の「出会いの創出」を、今までにないサービスで解決したいという思いで事業に取り組んでいます。

弊社の主要サービスである「しゃべる就活イベント」は、参加企業を知らされないまま、長時間のビジネスワークに没頭します。その中で発揮される「素」の能力や姿勢を、企業側が評価する仕組みです。

最大の特徴は、志望動機が社名や業種ではなく評価されたという「承認欲求」から気になり、興味が形成されるという点です。イベント後半、学生は企業からの評価を確認します。そこで、「自分を高く評価してくれたこの会社は一体どこだろう?」と関心を持ち、対話が始まるのです。学生は自分に合った企業を見つけやすく、企業側もターゲット学生のパフォーマンスを見た上で口説けるため、双方にとって満足度の高いマッチングが実現すると考えています。

マーケットにフィットしないアイデア。失敗から学んだ「新しさ」のジレンマ

失敗から学んだこともたくさんあります。特に痛感しているのは、自分が「もっとこうしたら面白いのに」と考えてつくったサービスが、必ずしもマーケットにフィットするわけではないということです。

たとえば、以前は「広告宣伝費が足りないから認知されないだけだ」と考え、広告を積極的に打てば刺さるのではないかと思ったこともありました。しかし、それでも思ったような成果が出ない。これは新卒採用市場特有の難しさがあるからです。学生にとって就活は「やらなければならないもの」、つまりネガティブな動機から始まることが多いため、単に露出を増やすだけでは響かないのです。

また、サービス開発においては、テストとヒアリングを重ねた結果、いつの間にか既存のサービス……つまり、「すでにあるもの」に近づいていくというジレンマも経験しました。ユーザーの声を反映してマーケットフィットさせようとすればするほど、斬新さは失われ、2000年代から変わらない既存の大手サービスと同質化してしまいます。

もちろん、斬新なものをつくって世に出しても、市場は簡単には受け入れてくれません。そうした難しさを肌で感じてきたからこそ、大革命を起こそうとするのではなく、既存の要素も理解しつつ、少しずつ新しい価値を浸透させていくことの重要性を感じています。

「ミッションの奴隷」として裏方に徹する。脱・トップダウンで組織を進化させたい

経営者としての私の役割は、「ミッションの奴隷」です。もともとマネージャーだったこともあり、サービスや事業がタレントだとすれば、私はマネージャーであるべきだと考えています。サービスを活用してくださるクライアントや、学生が輝くための「一番の裏方」。それが私のスタンスです。

経営は常に大変です。後から振り返れば、1期目などは楽だったように感じますが、いつも「今が一番大変」だと感じていました。会社が大きくなっていく過程は、筋肉痛と似ているかもしれません。負荷をかけて筋肉がついていくように、困難を乗り越えることで会社も成長していくのです。だから、今がしんどいのは成長している証拠なのだと捉えています。

また、創業から今まで、私の思い通りに進めてきた部分を、あえて手放す努力もしています。会社の成長に伴い、さまざまな人の意見を取り入れ、会社としての機能を高めるためです。決定権を私に集中させず、経営幹部に委ね、チームとして会社を動かしていきたいと考えています。

求めるのは「普通に笑って、泣ける人」。共感と素直さで、採用市場を変えていこう

弊社が採用において求めるのは、奇抜なアイデアを持つ人や尖った人というよりも、「普通にちゃんと笑って、ちゃんと泣ける人」です。私たちのビジネスはBtoBであり、さまざまな企業の考え方に共感し、寄り添う必要があります。このとき大切になるのが、お客様の要望に合わせていける素直さです。

今後の目標は、会社としてのIPO(Initial Public Offering:新規公開株式)です。すでに準備も進めています。新卒採用市場は、「一括採用」という日本ならではの文化もあり、新しいサービスが生まれにくく、変えにくい。しかし、私たちはこの課題に挑戦し続けていきたいと思っています。

これから社会に出る若い方々には、ぜひ企業のインターンシップに積極的に参加してみてほしいです。アルバイトとは違う形で企業や仕事の雰囲気を肌で感じることは、とても良い経験になります。

そして、今まさに就活に直面している方には、ぜひ弊社のイベントに参加してもらいたいと考えています。一度でも参加すれば、きっと就活の概念が変わるはずです。そこで何かを感じ、共感してくれた方が、今度は企画する側として私たちの仲間になってくれる。そんなサイクルが生まれることを楽しみにしています。