Fulfill株式会社
代表取締役

北海道生まれ、山口県育ち。高校入学後すぐに「早く社長になりたい」という思いから、経営者である伯父を頼り、横浜へ移住する。通信制高校に通いながら伯父の経営する会社で働くも、建築業界に関心が持てず退職。大学進学後、IT系ホールディングス企業のグループ会社に入社。営業職からスタートし、企画などを経てグループ会社の代表に就任する。その後、東日本大震災を機に死生観が変わり、大阪に移住し、吉本芸人になる。結婚を機に芸人を辞め、2015年にFulfill株式会社を設立。現在はIT事業と人材事業を軸に、「働く人が幸せな世界を目指す」というビジョンを掲げ、企業活動をしている。
私が起業するきっかけになったのは、結婚でした。吉本を辞めると決心してからは、起業以外は考えず、すぐに株式会社を設立しました。創業当初は、ビジネスモデルが確立されており、営業力があれば数字をつくれるブロードバンド事業からスタートしました。
しかし、市場が飽和し、顧客の取り合いになっている状況に意味を見いだせなくなりました。折しも2015年に大手広告代理店での過労死事件があり、日本全体で働き方改革への意識が高まっていた時期でした。そこで、IT活用による業務改善こそが時代に求められており、社会的意義も大きいと考え、BtoBのオフィスコンサルティング事業へと舵を切りました。
現在は、IT事業と人材事業の2つが柱となっています。IT事業では、システム開発をはじめ、AI研修、ホームページ制作、AIを活用したAIO(AI検索最適化)対策などを行い、人材事業では、人材紹介や人材派遣、エンジニアの育成を手がけています。日本の企業の99.7%は中小零細企業といわれていますが、弊社のお客様も小規模な会社様が多いです。AIやIT技術を活用した業務改善と、それを支える人材の育成・派遣を通じて、お客様の課題解決に伴走しています。
弊社の事業において最も大切にしている理念は、「信頼」です。信頼関係があるからこそ、仕事を任せていただけますし、難しい局面でも相談をいただけるのだと考えています。信頼して頼まれたからには約束を守り、実現することで満足していただき、その結果、次の紹介につなげていくためには、健全なマインドで仕事をすることが不可欠です。
また、弊社ならではの強みは「ホスピタリティ」です。たとえば、料理を提供する際も、産地や調味料の説明を添えることで味わいが変わるように、納品時の説明や雰囲気づくり、相手の立場に立ったコミュニケーションを重視しています。特にIT業界はカタカナ用語が多くなりがちですが、お客様によってはそれがストレスになることも珍しくありません。そこで、相手に合わせてわかりやすい言葉を選び、相談しやすい関係性を築くことを心がけています。
弊社の特徴は、導入して終わりではなく、成果が出るまで伴走することです。たとえばAI研修の場合、研修を実施しただけで終わるのではなく、その後社内で人材が育っているかの分析を行います。もし社内だけで運用が難しい場合は、弊社のAI人材を派遣し、週に1回程度一緒に働きながら業務改善や社員育成を行うなど、柔軟にサポートするのが特徴です。
組織づくりに悩んだ時期があります。創業当初は、何でも自分でやったほうが早いと思い込み、仕事を抱え込んでいました。しかし、組織が大きくなるにつれて、自分だけでは全体が見えなくなり、限界を感じるようになったのです。そこで、「任せることも経営者の仕事だ」と気づき、社員を信じて任せるスタイルへと変化させていきました。もちろん、重要な局面では責任者として矢面に立ちますが、基本的には社員の成長を促し、持続可能な組織をつくることを意識しています。
また、私が自分の失敗から学んだことは、「失敗は隠すものではなく、次に活かすものである」という考え方です。失敗したくてやっている人はいません。弊社が重視しているのは、失敗を責めるのではなく、同じ失敗を繰り返さないための仕組みづくりや環境づくりです。「誰のせいだ」と犯人探しをするのではなく、全員が自責の念を持ちつつも、過度に落ち込まずに切り替えていく「良いキッカケにしよう!」という文化が社内に根付いています。
私自身も以前は感情的になることがありましたが、深く考えても仕方がないことはスパッと切り替え、次に進むようになりました。経営者としての研修を幹部や社員とともに受けることで、価値観を共有し、組織全体で成長することを目指しています。
今後の展望として、社内ベンチャーに力を入れていきたいと考えています。すでに人材事業を分社化し、社員を代表に据えた実績も生まれました。世の中には10年以上続く会社が10%にも満たないという厳しい現実があります。いきなり独立して苦労するよりも、まずは社内で練習し、応援を受けながら事業を育て、軌道に乗った段階で解き放つほうが成功確率は高いと考えています。
私自身、会社を牛耳りたいという思いは一切ありません。責任者を増やし、ホールディングス化を進めることで、多様な事業を展開していきたいと考えています。社内からも「この事業をやりたい」という声が上がってくるような、挑戦を歓迎する風土をつくりたいです。
また、業界全体の課題として、AIやDXのスピードが非常に速く、手段が目的化してしまっている側面があると感じています。世の中は便利になっていますが、それによって人々が本当に幸せになっているかは疑問です。コミュニケーションツールが増えすぎて連絡に追われたり、SNSに依存したりと、弊害も生まれています。弊社では、流行に流されるのではなく、「何のためにその技術を使うのか」という本質を見失わず、技術に使われるのではなく使いこなす側として、人々の幸せにつながる事業を展開していく姿勢です。
学生の皆さんには、若い時期に「自分の価値観を言語化すること」に取り組むことをオススメします。自分がどうなりたいのか、何を大切にしているのかを言葉にできなければ、他者に思いを伝えることはできませんし、自分のことを理解していなければ、人生の選択も難しくなります。そして、「環境のせいにせず、自分で選ぶ力」を身につけてください。今の自分があるのは、過去の自分の選択の積み重ねです。親や会社、時代のせいにせず、すべてを自責ととらえれば人生を主体的に切り開けます。
弊社が一緒に働きたいと考えているのは、誠実さを持ち、変化を前向きに楽しめる人です。人を大切にし、自分に足りない部分を補い合える仲間を敬うことができる人とともに成長したいと願っています。弊社には活躍できるフィールドがたくさんありますし、もし職種が合わなければ、社内転職という形で別のポジションに挑戦する道もあります。
人生は一度きりです。自分の可能性を信じて、私たちと一緒に、まだ見たことのない景色を見に行きましょう。芸人時代に舞台で滑った経験より、仕事の失敗のほうがよほど痛かったです。失敗を恐れず、挑戦することを楽しめる方をお待ちしています。